美少女軍団、本気でたぬきになる

“私の小学校での演劇部での話です。4年生から所属できて前期(半年)後期(半年)で好きな部に所属します。冬はそれなりに寒くなる地域だったので外での運動部は活動が難しくなります。それなので室内の文化系、またはバスケなどの室内運動部に分かれます。

演劇部なのでやはり女子が中心に集まりました。ただその年はいつにも増す美少女ぞろい。キッズモデル顔負けの美少女も多数所属していました。

ある日、文化祭に向けて演目をきめなければいけなくなりました。普通なら夢見るようなシンデレラとかなんとか姫とかファンタジーにあふれる人間が登場するものを考えそうですが、なぜかその時のメンバーで「動物の話を演じよう!」という事になったのです。

メンバーは女の子、それも美少女が多かった年なのに、みんなの話し合いで決まったのはなんとたぬきの話・・・。誰が言い出したかは覚えていませんが、数ある動物の中でもライオンの壮大さでもシカのスラッとしたイメージでもない野暮ったいたぬきの話です。しかも日本昔話系です。

私はドキドキしながら美少女軍団に目をやりました。きっと「私、かわいいから舞台に出られる演劇部に所属したのにそんなたぬきの話はイヤ」とでも言うのか、絶対反対するだろうとすでにドキドキがヒヤヒヤに変わっていました。しかし彼女たちが一斉に口にしたのは「たぬきの話、いいね!かわいいし」でした。

当時はジャージを着て練習していました。普通にみれば彼女たちの顔のかわいさとダサダサのジャージは完全にミスマッチでした。

本番当日、美少女たちもみな、狸の着ぐるみに狸のメイクアップを施し「しょ、しょ、しょじょじ~」と腹を叩きながら舞台を回るのはおかしくておかしくて吹き出しそうになりながら演じ切りました。いや、吹き出していましたがそれを楽しく踊っているように見せかけていました。

かわいくて純粋というのはある意味罪だわ、とその時美少女軍団より少し年上だった私の脳裏に強く刻まれた不思議な瞬間でした。”