「グッド・バイ・マイ」を演じたときのこと

私の通っていた中学校では毎年秋に行われる文化祭で3年生が演劇をするっことになっていました。私たちは「グッド・バイ・マイ」を行うことに決まり、出演者の募集、オーディションがありました。私は演劇には正直あまり興味がありませんでした。

しかし、2年前私の姉が「耳をすませば」の主役を演じ、演劇の好きな姉はそれはそれは見事な演技で観にきていた保護者からも、先生からも好評でした。そんな記憶がまだ抜けていない学校で私はほぼ無理矢理と言っていいほど役に立候補させられました。人数も集まっていなかったので断り辛く、中学校生活最後の思い出として少し登場する役でもしようかなと思っていました。すると、まさかの主要登場人物に抜擢されてしまいました。少し登場なんてものではなく舞台の最初から最後まで出ることになりました。内心、ちょっと嫌だな、やめたいなと思ってしまいましたが小心者の私には断ることも役を変えて欲しいとわがままを言うこともできず本番に向けて稽古が始まりました。

台本を読むと私が演じる役は将来暴走族に入っているというシーンがありました。ここが私演じる役の一番の見せ所でもあり、一番難しいところなんだろうなと素人の私でも分かりました。実際に稽古していてもこのシーンになると他のシーンとは比べ物にならない緊張と恥ずかしさでなかなかいい演技が出来ませんでした。

しかし、中学生の演劇だからそこまで誰も求めていないだろうと思っていました。そんな中、1人の演技が私の心に刺さりました。普段は大人しくてあまり人と喋っているのを見たことがない女の子の演技が本当に素晴らしかったのです。役としては本当に難しい役で、自分は死ぬと分かっているのに生まれていく役でした。この役にその子はなりきっていました。主役が飲まれてしまうほどの演技力、存在感、誰が観ても上手いとわかる演技に私も驚き、同時に感動しました。その子の演技を目の当たりにした時、私も観ている人を感動させられるような演技をしたい!と思い、台本を一から読み直し、役になりきれるよう努力しました。

そして本番を迎えました。順調に話が進んでいき、いよいよ私の見せ場のシーンがやってきました。観客の多さに練習の時とは比べ物にならない緊張感に押しつぶされそうになりましたがそこはみんなに迷惑をかけられない、大事なぶたいを潰してはいけないと思いました。そして、思い切って自分の出来る精一杯の演技をしようとそのシーンに臨みました。すると自分でも驚くほどの台詞の言い回し、身振りが出来ました。このシーンの写真が卒業アルバムに載っていましたがまるで別人のような顔をしていました。

そしてついにラストシーンが終わり出演者が全員舞台に上がり観客にお辞儀をすると大きな拍手、中には感動で泣いている保護者の方もいました。「あぁ、やってよかった。」そう思うと自然と涙が溢れてきました。それからの学校生活、文化祭の話が出るたび嬉しいような恥ずかしいような気分になりましたが、私の中では本当にいい思い出になりました。